沖縄には戦前・戦後を通して3つの時代があった

アメリカ国旗

沖縄には戦前・戦後を通して3つの時代があります。それぞれの時代によって特徴がありますが、沖縄の人々は異なる時代の特徴をうまくミックスさせ独自の時代を作りました。ではその元となった3つの時代とは?

三国時代を経て琉球統一を果たし、中国の冊封を受けながら栄華を築き上げてきた琉球王国時代のことを「唐の世」と言います。

当時中国は「唐」の時代でしたので、「唐(中国)の影響が大きな世(時代)」という意味になります。

この時代の沖縄は、中国だけでなくアジアとの貿易が盛んにおこなわれていました。

貿易のハブ拠点ともいわれ、物の交流だけでなく人や文化の交流も盛んにおこなわれていました。

そのため昔ながらの沖縄の文化や思想には、当時の中国の文化・思想が広く影響しています。

ただ問題は年に何度もやってくる冊封使の接待でした。

中国の冊封を受けることによって様々な恩恵を受けることが出来た琉球ですから、中国からの使者を丁重にもてなすことは中国との関係を保つことにつながります。

つまり冊封氏の接待は、当時の琉球王国にとって国家プロジェクトだったのです。

そのため冊封使一行をもてなすための料理のためにわざわざ中国に料理人を修行に行かせたり、冊封使たちが滞在中に飽きない様に様々な催しをして手厚くもてなしました。

もちろん札風刺から無理難題を押し付けられることも度々ありました。

とはいえ相手の機嫌を損ねれば、何をされるかわかりません。

もしも「ひどいもてなしをされた」と冊封使が中国の皇帝に報告すれば、皇帝だって黙ってはいません。

当時の大国といわれた中国から攻撃をされれば、小さな琉球王国などひとたまりもありません。それだけに当時の琉球王国は、良くも悪くも「唐の世」だったわけです。

海外貿易によって財を成していた琉球王国ですが、そこに目を付けたのが日本です。

薩摩藩が琉球の統治に加わるようになると、徐々に琉球王国の体力が奪われていきます。

このタイミングを見逃さなかったのが、当時の明治政府です。一気に畳みかけるようにして琉球王国を消滅させ、新たに「沖縄」として日本の統治下におきます。

この時代を「大和の世」と言います。

ところがこの時代は戦争と共に過ぎていきます。日本の一部となった沖縄は、唯一の地上戦の戦地となります。

そして琉球王朝時代に建てられた数多くの建造物などを含め地上にあるすべてのものが破壊されました。男性たちは徴兵制度によって戦地に送り込まれ、さらに多くの学生たちも学徒隊として戦地に動員されます。

そして終戦間際には、住人までもが戦火に巻き込まれます。

しかも当時の日本兵によって「捕まれば生きるよりももっと悲惨な目に遭う」と信じ込まされていた住民たちは、壕の中で集団自決をしたり崖から飛び降りて自決しました。

このような悲惨な出来事を経験した沖縄は、終戦によってアメリカの統治下におかれることになります。

アメリカの占領下となることによって、図らずも「大和の世」は終わりを迎えます。

アメリカの統治下におかれた沖縄は、それまでの常識がすべて変わります。ただその状況は時間の経過とともにどんどん変わりました。

終戦直後の沖縄では、何をするにしてもすべてが配給制でした。

もちろん食料はアメリカ軍から配給されますが、衣類などもすべて配給制でした。つまり「お金が要らない時代」だったわけです。

その後しばらくすると「お金が必要な時代」になります。ただしこの時に使われる通貨も、ころころと変わっていったのが特徴です。

最初につかわれたのは、「大和の世」で使われていた日本の「円」通貨でした。

ところがこれはすぐに廃止され、代わりに米軍の軍票が通貨としてB円がつかわれます。ただしこれもしばらくすると米国ドルに変わります。

沖縄の通貨がドルに替わると、沖縄の街の風景が一気にアメリカ風に変わっていきます。

子供たちが口にするお菓子はアメリカ製のチョコレートやキャンディーになりましたし、街の看板は横文字看板が主流になります。

輸入品も多く流入してきたため、かつて「唐の世」と呼ばれていた時代と同じように輸入によって街は活気づきます。

特に戦後最初に復興した国際通りには多くの輸入品店が軒を並べ、買い物客でごった返していました。

様々な国の統治下におかれながらも、それぞれの時代の特徴をうまくとらえながら独自の文化を生み出してきた沖縄。

確かに荒れ野原だった沖縄が復興に向かうためには、アメリカ世の影響は少なからず必要でした。

でもアメリカ世を生き抜く中で見えてきたのが、「本当の沖縄の世はどこにあるのか」だったのでしょう。

様々な葛藤がありつつも最終的に日本復帰を目指すことになった沖縄。ただ当時の沖縄県民が望んだ「本当の沖縄の世」と現実はちがいました。

今なお様々な問題が多く残る沖縄。

でも現在に至るまで沖縄がたどってきた3つの時代のことを考えれば、時間はかかっても今の時代の良い部分をうまく取り入れながら新しい時代へと変わっていくことでしょう。

ただそれが「いつ訪れる未来なのか」ということだけが未だにわからないだけなのです。