沖縄のことわざを耳にすることはなかなかありませんが、その言葉の意味を知ると「なるほど!」とうなってしまうものもあります。今回はよく知られているものから、今では地元でも知らない人が多いものまで集めました。
その①【命どぅ宝】
沖縄を代表することわざといってもよいものです。一般的な解釈としては「命に勝る宝はない」と解釈されるのですが、本当は若者に向けての苦言として使う言葉です。
「たった一つしかない命なのに、若いからといって命を粗末にするようなことはしてはいけないよ」が、このことわざのもととなった言葉の意味に最も近いです。
ちなみに私も若い頃に言われたことがあります。仕事がうまくいかなくてぼーっと海を眺めていた時に、通りかかった見知らぬオジイに「あんたがいくらやりたいことがあっても、命がなきゃ何にも叶わないんだからね!」といきなり言われました。
たったそれだけを言って去って行った見知らぬオジイでしたが、あれから10年以上過ぎてもオジイのあの時の言葉は忘れられません。
その②【生まれたら同級生】
このことわざを今でも使う地元住民はほとんどいませんが、その意味はとても深いです。
人間の寿命がいつまでなのかわかりません。平均寿命というものはあっても、それをとっくに超えるほどの長寿もあれば、成人を迎えること死んでしまうこともあります。
だから同じ年に生まれたとしても、みなが同じ年まで生きるとは限りません。
言い換えれば「お前は年下のくせに生意気だ!」とあなたに嫌味を言う先輩でも、その人が死んでしまえば後輩であるあなたと同級生になります。
だから先に生まれた方が偉いということは、人間の寿命を考えればありえないのです。
その③【ハブの夢を見るといいことがある】
「蛇の夢を見るといいことがある」というのは日本全国で耳にすることですが、さすがにハブが登場するのは沖縄だけでしょうね。
意味としては塀の場合とほとんど同じで、脱皮をするごとに成長していくことから「出世する」「金持ちになる」「有名になる」などといいます。
ただし本土ではハブそのものが生息していませんから、このことわざは沖縄限定といってもいいかもしれませんね。
その④【ヒヌカンの前で人の悪口を言うな】
沖縄ではいまだによく耳にすることわざです。ヒヌカンとは竃神のことで、沖縄では「火の神」と書きます。
ヒヌカン=竈神ですから、いらっしゃるのは台所のコンロの前です。沖縄では今でもガスコンロの前(IHコンロであっても同じ)にヒヌカンを祀る香炉が置かれ、家の女性が祀っています。
ヒヌカンは忙しい主婦にとってとても便利な神様で、世界に存在するどの神様ともダイレクトにコンタクトをとることが出来ます。
例えば沖縄から遠く離れたアメリカの親族の仏壇のご先祖様であっても、ヒヌカンを通せばタイムラグなくお願い事が通じます。
でもヒヌカンは馬鹿がつくほどの正直者なので、耳に入ったことはすぐさま報告する欠点があります。
だからヒヌカンがいる台所で人の悪口を言うと、すぐにヒヌカンは悪口を言われた人のご先祖様に報告します。
それを聞いて怒ったご先祖様は、さらに偉い神様に「うちの子孫が○○にとんでもない悪口を言われているので懲らしめてやってください」と言います。
こうしてヒヌカンの前で悪口を言ったあなたには、神様からとんでもない災いがもたらされるのです。
その⑤【夜に家に帰ってきたらトイレに行ってから家に入れ】
かつての沖縄のトイレは「豚小屋兼トイレ」という不思議な様式のトイレでした。
この様式は中国から伝わったものだといわれているのですが、「人間が用を足す→豚の肥料になる→食肉として豚を人間が食べる→人間が用を足す」というように循環型の生活を実現するための画期的なトイレでした。
このような豚小屋兼トイレのことを「フール」というのですが、フールは用を足す以外にも重要な意味がありました。
フールに住む豚は、沖縄ではとても強力な魔力を持った神様といわれています。
なにしろその鳴き声だけでどんな強力な魔物も追い払ってくれるのですから非常に便利です。
しかも沖縄では人間が住む世界と魔物が住む世界に境界線はないので、外出先で出会った魔物を知らずに家に引き連れてしまうこともあります。
さらに夜になると昼よりも魔物の量が増えます。そのため夜に家に帰ってきたら家に入る前にトイレに行き、豚の鳴き声で魔物を払ってもらってからでなければ家の中に入ることが許されなかったのです。
知ってみると意味が深い沖縄のことわざ
沖縄のことわざは日本各地に伝わることわざと意味が同じなものもありますが、沖縄ならではの風習や考え方から生まれたことわざは沖縄以外にはありません。
ただしこうしたお縄のことわざはほうげんではなされるため本土出身者にとっては理解が出来ないのですが、わかりやすい言葉で説明を受ければ納得できるものも多いのです。
今回は代表的なものだけを紹介しましたが、ほかにも沖縄のことわざ(「くがに言葉」ともいいます)はたくさんあるのでぜひ調べてみてくださいね。