浦添の「当山の石畳道」は、その昔琉球の王様も通ったといわれている古い街道です。そこには古い石橋「干支橋」があるのですが、その由来はいまいち不明…。そこでこの橋の名前の由来を様々な角度で考えてみました。
橋の入り口にあるシーサーから由来を考えてみる

橋の入り口には、沖縄ではオーソドックスな守り神・シーサーが1対建てられています。シーサー自体は守り神としてだけでなく、厄除けという意味もあります。
ただシーサーから干支橋の名前の由来を考えるのは、ちょっと強引かも…。
もしもあえて由来となりそうなことを考えるのであれば、「琉球の神様が日本中のいろんな神様と一緒に守ってくれているありがたい橋」ということになるのでしょうか?
オーソドックスに干支の動物から由来を考えてみる

もう少し現実的な路線からこの干支橋の由来を考えてみることにしましょう。
干支橋は橋に十二支の動物がそれぞれ描かれています。それぞれの動物には、意味と特徴があります。ざっと紹介していくとこうなります。
- ネズミ:子孫繁栄の象徴
- ウシ:誠実さの象徴
- トラ:決断力・才知の象徴
- ウサギ:従順の象徴
- タツ:正義の象徴
- ヘビ:情熱の象徴
- ウマ:楽観的な象徴
- ヒツジ:人情家の象徴
- サル:好奇心の象徴
- トリ:親切の象徴
- イヌ:勤勉の象徴
- イノシシ:無病息災の象徴
結論からいうと…
とにかく縁起の良い動物ばかりに取り囲まれている橋ということはわかります。
ただそれぞれの動物ごとに違う意味があるので、橋を渡ることによって12種類のご利益がいっぺんにもらえるということなのでしょうか?
もしもそうであれば毎日とはいかなくても、少なくとも月に1度は足を運んで橋を渡っておく必要があります!
そしてこれが本当に干支橋の名前の由来なのであれば、これこそが沖縄究極のパワースポットということになりそうです。
十二支の登場順から由来を考えてみる

実は当山の石畳にある「干支橋」には、橋の手前から順に「子・丑・寅・卯・辰…」と十二支が一つずつ絵柄入りで登場していきます。
橋をどちら側から渡っても同じ順番で十二支の動物が登場するように、必ずわたる側から見て右側から「子・丑・寅・卯・辰…」となっています。
この並び順から考えてみると、「橋を渡りきると年を取る」ということにもなります。
もちろん橋は行き来するものですから、帰りも同じ橋を通るのが前提になります。でもそうすると1回往復するだけで2年も年を取ってしまうことになります。
比較的こういう場合には、「若返り」のご利益があるとありがたられます。
そのセオリー通りで考えるのであれば、この干支橋は何とも縁起の悪い橋ということになります。
ただしここで問題があります。この説はあくまでも「右側通行であることを前提にしています。
これがもしもこの橋が作られた当時の沖縄が「左側通行だった」とすればどうでしょうか?
これだと1往復するだけでなんと2年も若返ることになります!これはすごい発見です!
ついうっかり「子・丑・寅・卯…」の順で進んでしまう癖がついているので気が付かないのですが、もしも「亥・戌・未・午…」と呼んでいるのが正しいのであれば、通るたびに若返るとんでもないパワースポットになります!
干支橋の動物は、1つだけあり得ない並び順になっている

もう一度この干支橋の検証をするために橋を観察してみると、ふとあり得ない事実に気が付きました。なんだか干支の動物の順番がおかしいのです。
もう一度十二支に登場する動物を干支順に読み上げていきましょう。
正しくは「子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)・亥(い)」ですよね?
ところが干支橋に描かれている動物は、先頭に「酉」がいるのです。
しかも干支と干支を挟むようにして酉が登場するので、動物順に並べてみると「酉(とり)・子(ね)・丑(うし)・寅(とら)・卯(う)・辰(たつ)・巳(み)・午(うま)・未(ひつじ)・申(さる)・戌(いぬ)・亥(い)・酉(とり)」になります。
これでは犬猿の仲と呼ばれる「申(さる)」と「戌(いぬ)」が隣同士になるというとんでもないハプニングが起こります。
まあこれは「たくさんの神様の中で考えればそれほど大した問題ではない」と考えたとしましょう。
それにしても「酉」をなぜあえて先頭と締めに配置しているのでしょうか?
ものすごく単純な考えでいえば「橋全体のデザインを考えると酉を両端にいた方が収まりが良い」ということになるのですが、これでは「干支橋」と名前を付けた由来が見つかりません!
そうなると、「酉はどんな意味があるのか?」ということに注目しなければいけません。
しかも困ったことに、ここでもう一つのことに注目をする必要があることに気が付きました。
本来干支で「酉」というと「ニワトリ」のことを意味します。ところが干支橋に描かれている酉はそれとは明らかに違います。
どう見ても卵を産んでくれるあのニワトリとは形が似ていません。立派な長い尻尾をもって空を飛んでいる様子から見ると、これは伝説上の鳥「鳳凰」のようにも見えます。
もしもそうであれば、干支橋の鳳凰のすぐそばには琉球最強の守り神・シーサーがいます。
最強のシーサーと幸運をもたらす伝説の鳥・鳳凰。この組み合わせが導き出すものは、「最強に守られた橋」ということなのでしょうか?
これでは結局、振出しに戻ってしまったような気がします。
名前の由来の解釈はどうであれ、とにかく縁起が良い場所であることは間違いない!
いろいろな説を出してみましたが、ここまでくると「最終的に自分が一番気に入った解釈で訪れてみるのが一番いい」というのが結論になりました。
人が訪れることはほとんどない隠れた穴場スポット・干支橋。あなたならどんな解釈をしてこの不思議な橋を渡ってみますか?
干支橋(浦添大公園内)
住所:沖縄県浦添市伊祖115-1
注意:意外とわかりにくい場所にあります。もしも道に迷ったら、浦添大公園側にある「当山の石畳道」と書かれた看板から集落の中に入っていきましょう。
石畳道全体はなだらかな散策コースになっていますが、入り口付近は滑り落ちそうなくらい急な石畳があります。雨のあとなどは滑りやすいですので、十分お気を付けください。